人々がその多様性を認めつつ融和的に共存する共生社会を実現するためには、言語・文化・価値観・知識・身体的能力の違いなどを越えて、バリアのないコミュニケーション、すなわち「ユニバーサルコミュニケーション」が成立していなければならない。国際化のいっそうの進展とバリアフリー社会の深化が目指されている現代社会においては、世界の言語・文化について幅広い知識を持ち、性差や身体的能力の違いにとらわれない開かれたコミュニケーション能力を備えた 21世紀的な地球市民を養成することが喫緊の課題である。
いまや「ユニバーサルコミュニケーション」は普遍的な課題として認識されているものの、千葉大学をはじめとする連携取組4大学が位置する千葉圏域においては、それはとりわけ重要な意義・背景を持っている。首都圏に位置して成田国際空港を擁する千葉県は、在住外国人が全国で5番目に多い都道府県であり、しかも千葉県をはじめとする千葉圏域の地方公共団体では、「成田トランジットツアー」の提起など、成田国際空港を利用する外国人への観光誘致を本格化しようとしている。これによって、流動する一時的滞在者を含めれば、千葉圏域の滞在外国人の総数は、全国的にも一、二を争う規模となっている。したがって、言語・文化・価値観を越える「ユニバーサルコミュニケーション」の確立に向けて、地域社会の知的基盤条件を整備していくことは不可欠なのである。
本取組は、当該連携地域における目前の課題、ニーズに応えるものでありながら、同時に、国際化・社会のバリアフリー化を深化させていかねばならない現代日本の針路とも合致する。本取組の舞台となる千葉圏域は、首都に隣接する過密な商工業地域・新興ベッドタウンと、過疎に苦しむ農業・漁業地域との異なった類型の地域社会をともに抱えており、まさに日本の縮図と言うべき状況にある。ゆえに、本取組が実施される千葉圏域は、いわば「ユニバーサルコミュニケーション」を必須の条件とする日本社会の未来に向けた実験場であるとも言える。その意味で、本取組の事例は、他地域においても波及的に実施されるべき先行的事例となるであろう。
既に国立大学法人千葉大学と千葉県との間では、観光等の事業について協力していくための協定が締結されている。かかる連携関係がただ本学と千葉県の間における二者間関係に止まらず、本取組を起点として、千葉県と千葉圏域大学コンソーシアムとの間の連携関係に発展していけば、千葉県において目指されている共生社会の実現、あるいは外国人観光客の受け入れにもつながっていく草の根の国際化にも確実に資することになる。