概要

 「ユニバーサルコミュニケーション」のための教養教育にはきわめて多様な学問領域が含まれる。コミュニケーションの障害となるバリアの様態は多様であるためであり、したがってそのバリアを解除するために修得しなければならない学知と技法も本来多岐に及ぶ。しかし、これからの大学教育においては、「ユニバーサルコミュニケーション」を、21世紀の地球市民が備えるべき高度な教養として位置付け、体系性を持ったカリキュラムへと統合していく必要がある。しかしながら、「ユニバーサルコミュニケーション」を総合的に成熟させるために必須と考えられる中核的教育目標のみに限っても、1)世界の多様な外国語への理解、2)世界の多様な異文化への理解、3)手話・点字等、音声言語・表記言語に依拠しないコミュニケーション手段への理解など、そのカバーしなければならない領域はあまりにも広い。したがって、1大学で完成されたカリキュラムを備えることは困難が大きい。

 本取組は、参加4大学が千葉圏域コンソーシアムを形成し、「ユニバーサルコミュニケーション」のための教養教育に関するカリキュラムを開発すること、ならびに、かかるカリキュラムを実施していく際に発生する問題点を共有しつつ、コンソーシアム FD部会のもとでその実施方法を不断に改善していくための基盤的体制を構築すること、を当面の目標としている。この目標に向けて、コンソーシアム参加大学は内外の教養教育の実情について調査を進め、WGによる検討会を通して「ユニバーサルコミュニケーション」教養教育カリキュラムの基本設計を行い、かつ、独立行政法人メディア教育開発センターとも連携しつつ、e-learning教育システムを試験的に導入して一部試行に移すとともに、ICTを利用した FD技法の開発に着手する。また、開発されたカリキュラムを効率的に共有化していくために、サーバや教育用端末などICTの基盤的整備を実施する。

 本取組は、以上のようなカリキュラム開発・FDなどの大学教育のみに止まることなく、獲得された成果を基礎に据えながら、大学・地域において共生社会の実現を促進するための具体的な事業展開の構想を視野に入れている。想定されているコンソーシアムの展開的事業は、大学という教育の現場において、留学生、障害者の学習生活を支援していくための技法を共同で開発し、大学へのユニバーサルアクセスを強化することであり、あるいは、外国語・外国文化に関する社会人教育・生涯学習事業などのカリキュラムを開発し、外国人観光客受容に向けた地域社会の基盤的条件を整備することである。本取組は、このように、「ユニバーサルコミュニケーション」の発想を基底に据えながら、そこから共生社会の実現に向けて多様なシーズを発展させていく長期的・戦略的展望を前提としている。